【宮城文学散歩】白鳥省吾=栗原市(築館)=

一昨年10月末、河北新報に「白鳥省吾の詩脚光」と大きな見出しで報じられた。
昨年のノーベル物理学賞に決まった米プリンストン大上席研究員の真鍋淑郎さん(90歳)の自宅に白鳥省吾の詩「夕景」の墨書がかざられていたことを受け、栗原市白鳥省吾記念館への入館者と問い合わせが増えているというものであった。

『白鳥省吾(しろとり せいご)』1890年栗原市築館生まれ。旧制築館中・早大卒。平易な言葉で庶民の生活や感情を表す民衆詩派の代表的な詩人として活躍。
70冊を超える詩集、随筆集・童話集などを著し、米詩人ホイットマンの訳詩集も出版した。小中高校の校歌の作詩も数多く手掛け、校数は約200校に及ぶ。1973年83歳で死去。』(河北新報より)
※左写真:栗原市ホームページより。

築館町(平成17年4月、栗原郡10町村が合併して栗原市築館が誕生)では省吾が詩壇に残した業績を後世に伝えるために、町立図書館に隣接する旧商家の石蔵を改修し、平成10年7月に「白鳥省吾記念館」を開館、現在に至っている。この敷地内に省吾の故郷を讃える歌「現うつし世に」と省吾の肖像レリーフの碑が建てられている。

 “ 現うつし世に生まれし幸に 生きぬかん
              一千年の姥杉のもと “

 (この世に生まれてきたことに感謝し、一千年もの歴史ある姥杉の里で生きぬいていきたい)

この歌には、口ずさむたびに背中を押してもらっている。
薬師公園内には、

 “生れ故郷の栗駒山は
        富士の山よりなつかしや “

の詩碑が建立。

この公園の北側を望むと、秀峰栗駒山、1626メートルの全貌が展ける。市民の憩いの場となっている。
さらに『薬師八景』なる漢詩の創作。その中の四題目、「駒嶽夢雪」の漢詩は、私たち築館教場の会員が、市の文化芸術祭などで詩吟発表。
省吾は、お薬師様の入口近くに位置していた、築館村字町屋敷47番地に生まれた。お薬師様は幼少のころから、友達と遊びふけった格好の場所。
省吾の心の中には、何時もふるさとの景色が懐かしく浮かんでいたのであろう。

ここで、詩吟でもよく吟じられている白鳥省吾作詩の漢詩「飯盛に白虎隊を弔う」をご紹介いたします。

【書き下し文】
  松風颯々として忠魂を弔う
  渓水涓々として古今を洗う
  日月炳乎たり勝敗の外
  錦楓地に満ちて吟心を照らす

【通釈】
  松籟悲しき飯盛山に登り白虎隊を弔えば
  谷川の水は昔のままに流れている
  勝敗はもとより問題ではない、白虎隊の誠忠は今もなお光り輝いている
  全山を覆う楓の葉が地上に満ちて、吟情しきりに動く

大正初期の日本の詩壇を代表する一人である白鳥省吾の出現は、故郷築館市民の喜びであり、誇りである。
私たちは「省吾さん」と親しみを込めて呼び、その詩を語り、時には詠じて語り伝えている。
みなさん、是非栗原市築館の「白鳥省吾記念館」に足をお運びください。

                                 築館教場 川股 渓岳(宮城岳風会 会報第105号より)


【白鳥省吾記念館】
  所在地 :宮城県栗原市築館薬師三丁目3番26号
  開館時間:午前9時から午後4時30分
  休館日 :毎週月曜日、国民の祝日(月曜日が祝日の場合は翌日も休館日)、年末年始、特別整理期間)
  入館料 :個人 一般:210円(18歳以上) 小・中・高校生:110円
       団体 一般:170円(18歳以上) 小・中・高校生: 90円 ※20名以上。
  ※上記情報は執筆時点のものです。詳細は栗原市ホームページ等をご確認ください。

2022年01月01日